デザインに「偶然」はない


こんにちは。

アートの世界において、「偶然」が生み出す世界観や味わいは時として重宝されます。
例えば、インクを無作為に飛ばす「」などは、最低限の約束事を除いて、インクの軌跡や混ざり方を完全に意識の外に移動させています。

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一方、デザインにおいて「偶然」というのは存在しません。
何かを否定すると「本当にそうなのか?」という「悪魔の証明」めいた疑念が浮かび上がってきますが、そもそもデザインの意味を考えれば、至極当然のことといえます。

手当たり次第に叫んだ言葉は相手に伝わらない

「えっ、でもデザインしている私たちにだって感情はあるし、よくペルソナターゲットなんかでも『ターゲットその人の気持ちになりきって考えよう』って言われるじゃない。そこに偶然性を持たせることの何がいけないの?」
と、こんな風にお考えになる情熱家の方がいらっしゃるかもしれませんね。

確かにお考えの通り、デザインを施す私たちにももちろん感情というものがあって、そもそもデザインとは「誰かの意図を正確に伝える」ために行うものですよね。
熱い気持ちはとても大切なのですが、ここで留意すべきは「手当たり次第に叫んだ言葉は届かない」ということです。

この気持ち、正しく読み取れますか?
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簡単な例を示してみました。
情報を手当たり次第に羅列し、文字サイズや太さ、色の濃さをバラバラにしています。

私が何を伝えたいのか、果たしてきちんと伝わるでしょうか?
かなりの方は読むことさえ難しいと感じるでしょう。

ご覧になった通り、どんなに熱い感情があったとしても、そのままぶちまけただけではこちらの意図通り汲み取ってもらうのが難しくなります。
今回のバナーは極端な例ですが「いいデザインをしよう、いいデザインをしよう」と、集中しすぎるとデザインの構成が取れなくなってしまいがちです。
逆にシンプルなデザインを振り返ると良い結果につながることもあります。

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デザインの「偶然」は「必然」なり

最後に少しお話ししておきますが、世の中にはいかにも「偶然」らしく見えるデザインも存在します。
ですが、そのデザインは「(伝わる意図の正確さを崩さない範囲の)偶然」というような長い前置きが隠されていることを忘れてはいけません。
ランダム風なデザインの作り方については、また次の機会にお話ししますね。