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今回はゴーギャン「3匹の子犬がいる静物」について紹介します。
可愛い3匹の子犬が大きなテーブルの上で鍋のミルクを飲んでいます。こんな愛らしい絵をゴーギャンが描くのかと少々驚いてしまいますが、ゴーギャン独特の絵の特徴が描かれています。ゴーギャンは、しばしば遠近法を知らない画家と言われます。手前、中央、後方のそれぞれに視点を置いたように描かれ、陰影もほとんど施されていません。これは、浮世絵ふうの平面性や太めの輪郭線を取り入れた、画家なりの新たな絵画空間の試みだったと思えます。
ちょうど四十歳を迎えたゴーギャン(1848-1903年)は、経済的な困窮からフランス南西部の小さな村に住んでいましたが、すでに妻子とは長い別居生活に入っていました。必然的に、制作に専念するしかない時期でもありました。彼は村人たちの信仰心篤く、伝統を守る生活態度から、野生、素朴、幻想というモティーフを引き出していきましたが、一方、若い画家ベルナールから、太い輪郭線、立体感を排した線と色面の一体化といった手法も学んでいきました。家庭人としては孤独でしたが、その後の画風を決定づける重要な時期でもあったのです。
この作品は子どものために描いたという説があります。描かれた子犬たちのユーモラスな表情は、エキセントリックで奔放な印象の強いゴーギャンの、意外なほどの優しい一面を見せてくれているような気がします。
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