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今回はゴーギャン: 説教のあとの幻影(ヤコブと天使の争い)についてお話したいと思います。
ウジェーヌ・アンリ・ポール・ゴーギャンは後期印象派を代表するフランスの画家です。
ゴーギャンはポスト印象派として印象主義の筆触分割に異議を唱え、対象の質感、立体感、固有色などを否定し、輪郭線で囲んだ平坦な色面によって対象を構成する描写と、イメージを象徴としてとらえ、絵画上で平面的な単純化を目指す総合主義として新たな様式を確立しました。
説教のあとの幻影(ヤコブと天使の争い)は印象派主義を捨て、総合主義を確立させた最初の作品だとされています。
旧約聖書の一節「天使とヤコブの戦い」がモチーフとなっており、絵の右上で戦う天使とヤコブは、神父の説教を聞いた人々の幻影で、それらを目にしているのはケルトの民族衣装を着た農婦達です。
独特の雰囲気を作り出しているのは、原色の鮮やかな色彩によって地面が朱色に光り輝いているようにみえる神話的な背景と平面的な構図です。
奥行き、遠近感がなく、太い輪郭線で描かれた農婦たちや格闘する天使とヤコブ、真ん中にある大きな木などの対象は、徹底的までに平面化、単純化されています。
またこの作品は日本の浮世絵の影響がでており、「ヤコブと天使の争い」の場面は葛飾北斎の『北斎漫画の力士図』を参考に描かれたのではないかとも言われています。
中央の太い木が画面を二つに分け、現実の世界と幻影の世界の境界線になっているように見える構図に、画面奥で天使とヤコブの戦っている幻影を眺める画面手前の農婦たちのその穏やかな表情は素朴な信仰心を感じさせ、どこかしら厳かな時間が流れているように見えます。
現実と幻影の狭間にいるようにも感じるこの作品は写実的表現をせず、自分の内側にある抽象性を描くという画家の絵画表現がそのまま表れており、心の奥にまで染み込む様な感銘を受けます。
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