アルジャントゥイユの広場

シスレーは、当時労働者階級が起こしていた混乱を避け、パリ郊外へ疎開していた時期があります。その頃に描かれたのが「アルジャントゥイユの広場(ショッセ通り)」です。セーヌ河流域のアルジャントゥイユという街自体、1870年代前半にシスレーをはじめ、マネやモネ、ルノワールによっても描かれている通り、画家達を終結させた魅力ある街だったといえるでしょう。シスレーの作品は、アルジャントゥイユの広場からノートルダム聖堂へ向かう視点で描かれていて、遠近感を出すために、中央に焦点がいく一点透視図法を効果的に使用しています。家の壁や空へ広がる光の描写は、ずば抜けているといっても過言ではなく、同時期の作品の中で秀逸と讃えられる出来栄えでしょう。これ程の素晴らしい画だったにも関わらず、生前はそれ程評価されていなかったのですから、時代による絵画の価値はわからないものです。物静かな絵画は、観葉植物と組み合わせたり、イーゼルに飾ったりして演出してみるのも面白いかもしれません。

セーヌ川沿いの小さな漁村であったラ=ガレンヌ。2本の吊り橋が架けられてヴィルヌーヴという町ができた経緯があり、その頃シスレーによって描かれたのが1872年作「ヴィルヌーヴ=ラ=ガレンヌの橋」になります。爽やかな夏の1日を感じさせてくれる青空と白い雲、水面の空や反射する光と影に躍動感が溢れる作品です。明るい夏の日差しにも関わらず、ギラギラ感を出さない輝きなのは、光の効果をふんだんに駆使したシスレー・マジックならではでしょう。橋の下に見えるのは、貸しボート屋でくつろぐカップルやボート遊びに興じる人達で、生き生きとした様子が窺えます。シスレーの穏やかさが見る側にも伝わるようです。このような爽やかな作品にはとても人気で、どなたにでも好かれる絵画になります。お祝や贈り物はもちろんのこと、時期的に暑い夏を凌ぐ一服の清涼剤として、ゴルフなどのスポーツコンペの賞品や白い壁の補色に添えるのはいかがでしょうか。きっと飾って良かったと満足のいく絵画になるでしょう。

「サン=マメス6月の朝」は、ブリジストン美術館に収蔵されている作品です。この画を描いたのは1884年で、サン=マメスというのは、1880年代にセーヌ河の支流として存在するロワン川沿いに活動の拠点を移した、小さくて静かな村の名前になります。シスレーはこうした小さな村や町の名前をたくさん題名につけて作品を残していて、有名どころではない素朴な景色であるがゆえに、ここがまたシスレーの愛好家を掴んで離さない理由になるのでしょう。左にはセーヌ河とポプラ並木が続き、ゆるい右カーブを描きながらがらその先へと歩みを誘います。ポプラの葉は1枚ずつ揺れるように丁寧に描かれ、中央手前を占める土手道には、建物から落ちる青い影がどんどん迫ります。これまでの絵画では、影は黒に決まっていましたが、シスレーの描く影は光線を通しての繊細な色が感じられ、静かに降り注ぐ6月の朝の清々しさが伝わる作品です。とびきりお気に入りの額縁に入れて、思い思いの場所にシスレーテイストを飾ってみませんか。絵画選びが楽しくなるでしょう。

ロワン川沿いの小公園から眺める風景を描いた「驟雨(しゅうう)の中のモレの橋」は、シスレーの1887年作になります。1880年代にパリ、セーヌ川の支流の1つであるロワン川沿いに活動の拠点を移してから、周辺の風景を精力的に描きました。この「驟雨(しゅうう)の中のモレの橋」は、モレの橋、教会、ロワン川の3点が近景で描かれ、まるで映画で見るような景色がそのままに広がり、現在の風景も当時と変わりない情景を刻んでいます。突然の雨にも関わらず、穏やかさを感じてしまうのは、シスレーの人柄所以かもしれません。ピサロと並んで、印象派の長老的な存在と言われるシスレーですが、あくまでも実直な人柄を表すようなそんな穏かで暖かい作風が感じられ、激しさのない驟雨は遠い出来事のようにも思え、不思議な魅力を放っています。何事もなかった水辺のようにとうとうと優しく語りかけてくるような作品のテイストは、シスレーの優しさに浸れる絶好の機会です。お部屋のレイアウトの見直しとセンスアップを兼ねて、この1枚のチョイスをお勧めします。

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